研究室インタビュー

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材料や製作過程まで考慮したデザインへ

名古屋大学大学院

太幡英亮研究室

准教授

 

准教授

准教授

博士(工)、一級建築士

(たばた えいすけ)

長野県出身。2004年 東京大学大学院建築学専攻博士課程修了。
博士(工)、一級建築士。
渡辺誠/アーキテクツオフィス、東北文化学園大学助教を経て、2009年より名古屋大学助教。現在、名古屋大学工学研究科准教授。専門は建築計画学、建築・家具設計。
名古屋大学キャンパスでの設計やマネジメントを通じて日本建築学会賞、愛知まちなみ建築賞等を受賞。その他、研究や設計を通じて建築学会東海賞、中部建築賞など受賞多数。
身体・心理・行動と空間の関わりを分析する建築計画基礎分野に立脚した建築・家具設計とともに、建築集合体論などの分野で活動。設計の際は地域産木材へのこだわりを徹底している。

材料から組み立てまでイメージしてデザインに向き合う

 太幡研究室では、過去に木材を使わなかった設計プロジェクトはない。サスティナブルな材料として木材に注目し、大学の研究室に木材のフローリングを入れたり、駐輪場を間伐材でつくったり、住宅や公共施設などの設計では極力地域産材を用いながら「木造」でつくる取り組みを行ってきた。耐火建築や高層建築など木造にするのが難しい大きなプロジェクトでは、フローリングや家具に木材を使用するといったように、使えるところでうまく木材を使うようにしている。

 建築において、実際にものがつくられるための実施設計を学生の段階から行うことは非常に難しい。「家具の設計は学生自身がそれを実際に体験する非常に良いトレーニングになる。建築コンペのような図面ではなく、1/1スケールで製作の想像をしながら実施図を書くことは建築を設計する上でも糧になる」と考え、このコンテストにも過去6年間毎年参加してきた。コンテストは自分で実施図の用意や提案のプレゼンもしつつ、そのあと実際につくる段階になると施工図作成まで行う実践的な機会だ。「実施設計がないと実際ものをつくれないというのを理解することはすごく大事だと思うんです」と語る。

「バーチャルな建築でない場合には、必ずある材料を組み立ててつくらざるを得ない。そのときに、材料をどう組み立てるのか想像できないまま設計することは、本来問題だと思うんですよ。設計者であるからにはつくる人がどうつくればいいだろうか、どうすれば材料を効率的に使えるか、どうすれば技術的に無駄のないつくりができるだろうかと考えながら、物理的に可能な組み立てを想像して設計する必要があります」と、材料から考慮し
て設計を行う重要性を述べる。「やっぱり勝手な設計者になってはいけないと思っています。「私はアイデアを考えて絵を描くから、あとは勝手につくって」というのはすごく無責任ですよね。それってまったくその環境に対して責任を取っていない。どんな材料で、どうやって実際に組み上げていくか全部イメージしてデザインに向き合うことが大事だ」と述べた。

「材料から考える」ことが建築の本質

 今回のコンテストにあたって、まず学生が自由に考えてきたものに対して太幡准教授が応答していくプロセスを取った。「建築のアイデアコンペの提案がすごく得意な学生でも、実際にものをつくるときの本質がまだ理解できていないことが多い。何がダメなのかを繰り返し学生と議論していく中で、だんだんと理解できてくる」という。太幡准教授にとって建築の本質は「材料から考える」ことだ。その場所で今手に入る材料でどうつくるかというプリミティブな発想から設計は始まる。たとえば縄文時代の竪穴式住居を考えてみると、当時の人々の身の周りにどんな木があり、それをどのように組み合わせれば望むものができるかという流れで出来上がったはずだ。輸入材を使ったわけでもなく、周りに無い大きさの丸太ももちろん使えない。「そこで今採れる材料は何だという原始的な発想。そしてその材料を使ってどうつくるかというところから始まる。バーチャルに、どんな材料かよくわからないけどこんな形ができましたなんていうのはまっとうな建築じゃないよね」と話す。
今回のコンテストでも、与えられた材料を効率的に使いつつ魅力的な立体造形に昇華しているかに注目した。

 2019年度に地域の山の杉を活かす空間・家具コンテストで太幡研究室の学生が提案した「ヒモイス:re」は、1950年代につくられた渡辺力の「ヒモイス」という椅子のオマージュとして着想されたものだ。戦後当時は広葉樹で硬いナラ材が利用されていたが、コンテストではスギ材という柔らかい針葉樹を用いてリメイクできないか提案を行った。大まかな構造はもともとの「ヒモイス」を参考にしてつくりながらも、弱い部材に変わったことを受けて部材を大きくしたり、線で構成していた部分を面で構成して強度を上げたりと工夫を凝らした。

「これまでの学生コンペは形を決めてそこから素材をどういうふうに決めていくかというプロセスで設計していくことが多かったんですが、このコンテストはもともと材料が決められていて、素材から形をつくっていくという逆のプロセスが体感できました。しかもそれを自分の手でつくっていく達成感もありました。あと、部材同士がどういうふうに接合されていくのかを自分の手でつくりながら学べたことが大きかったです」と学生の佐々木君は今回の提案を振り返る。先に材料が与えられることで、実施設計では流通材の寸法やその強度・加工性などの特性を踏まえる必要があることを、学生が学ぶ機会にもなった

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材料の性質や強度は実際につくってみないとわからない

 好きなアイデアをとりあえず形にしようとすると、製作過程で無理が生じたり材料に多くの無駄が出たりする。スギってこういう堅さなんだ、とかこんな細かいところをつくると折れちゃうんだといったことは、自分でのこぎりで木を切ったりドリルで穴を開けたりしないとわからない。バーチャルの中の物体は壊れないという点が、実際につくる場合との大きな違いだ。「たとえばCADの中で書いた線は画面の中では限りなくゼロに近い幅の線ですよね。ですが、物理的な世界では限りなくゼロに近い線というのは存在しなくて、「遊び」という発想が必要になってくる。のこぎりで切ると2ミリぐらいはなくなることが実際に切ってみて初めてわかります」だからこそ、自分の手を動かして実際につくってみることが設計において何よりも大切だ。

 また、模型をつくることと違って実物を製作する際には、部材の強度を確認する際に組み立てて押してみて確認することができる点も重要だ。模型はスチレンボードという材料に縛られており、その前提の縛りを最初から受け入れてしまっていることが多いため、結局スチレンボードでしかつくれない造形が出来上がってしまう。模型はあくまでもスケールモデルであり、縮小版を別の材料でつくるということ。それをしっかりと想像しながらつくれるかが鍵となる。「模型の材料は何だっていいし実物の木でつくってもいい」と話す太幡准教授は、模型と実物を繋いでいく上で「素材から考えるという発想」の必要性を重ねて述べた。

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研究室メンバーに聞きました

[ 質問項目 ]

1 コンテストに出展したきっかけは?
2 作品を制作していく中で苦労した点を教えてください。
3 建築に興味をもったきっかけ、将来どのような仕事に就きたいか?

  • 趙卓君さん(修士2年)

    趙卓君さん(修士2年)

    1)入選者が実際に提案作品を製作できることはいい機会と思いますから、コンテストに提案しました。

    2)美観を考えて、曲線のある造形を提案しましたが、その曲線の部分は治具がないため、切るのはすごく難しいです。また、板の枚数は多く、手で作られたものは誤差があるので、組立には大変でした。

    3)学生時代に理系が得意で、デザインも好きでした。工学と設計が求められる建築分野に興味を持ち始め、将来も建築の設計に関する仕事に就きたいと思うようになりました。

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