研究室インタビュー

東海大学工学部建築学科 諸岡繁洋研究室 建築構造力学のサムネイル

ものの挙動を解析し、わかりやすい構造設計を考える

東海大学

諸岡繁洋研究室

諸岡繁洋教授

構造解析やコンピューター・シミュレーションと聞くと、それだけで難解で敷居の高いもののように感じられるが、「難しいことを難しく説明するのは当たり前。私が目指したいのは難しいことを簡単に話すことなんです」と諸岡繁洋教授は自身のポリシーを話す。「実験で求めた複雑な値を無理やり式に表しているから、RCの基準などは難しくなりすぎて感覚的に理解しにくい。実際に建っている建築自体はそんなに難しいことはなくて、人間が勝手に難しく解釈している。そうではなく、工学というのは、今ある現象を誰にでも使える状態に持っていくことだと思っています」

諸岡繁洋教授

諸岡繁洋教授

博士(工学)

(もろおか しげひろ)

1967 年 京都市生まれ
1991 年 京都大学工学部建築学科卒業
1993 年 同大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了
1995 年 同大学院工学研究科建築学専攻博士後期課程中途退学
1995 年 同防災研究所助手
2003 年 同大学院工学研究科建築学専攻講師
2005 年 東海大学工学部建築学科助教授
2013 年 同工学部建築学科教授

デザインのよりどころになる構造

幼少期からものをつくることに興味があったという諸岡教授は、京都大学在学中、ハインツ・イスラーのシェル構造のガソリンスタンドを見て感銘を受けた。「こんな考え方を設計の中で取り入れられたら、デザインのよりどころになるのでは」という思いから、RC シェル構造の研究室に在籍するようになる。学生時代は連続体、球形シェルをメインに複雑な連立方程式を用い、近似式を作って振動の連性などを解いていた。博士課程中退後は京都大学防災研で助手を、その後、工学部建築学科で講師をつとめ、RC シェルに限らず、鉄骨の研究や地震時の被害調査など多岐にわたって活動した。

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ものの挙動と構造設計

ラブなどを対象に、ものの挙動から構造設計を考える研究を行っている。
「ドームは基本的に引っ張り材ではなく圧縮材で作る方が構造的に有利とされています。球形シェルでは境界部を少し変更することですべてを圧縮材として考えられるのではないかという研究を行っています」

直交異方向性スラブについては、CLT 板の設計式を簡単に表現する研究を行っている。「繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料をスラブとして用いた際の設計法が確立されていないので、力の流れが一方向ではない材料をスラブとして使った時の設計式を簡単に表すことを目的としています」

 また、防災研究所に所属していたこともあり、防災への意識も高い。建物を安全に間違いなく作るための設計法の確立を目指して研究を進めている。具体的には屋内什器の転倒の検証を行っている。「一定の条件の下、例えばマンション何階の本棚が揺れに対してどのように挙動しているか。これくらいの縦横比のものなら倒れる、倒れないということをシミュレーションしています。シンプルにモデル化すると式もシンプルに表されます」

最近は「構造を学習するときに理解しやすく するためにはどうすればいいか、にも興味があ ります」といいフレーム構造教育用教材の開発 にも力を入れる。「もともとはオープンキャン パスで高校生や中学生にも視覚的にわかりや すくするために考えました。マーカーをつけた フレーム模型を振動台で揺らしてどう挙動す るかを見ます。web カメラで撮影した画像を 解析して、マーカーの動きから曲げモーメント 図や剪断力図、軸力図を、撮影した画像に重ね る、プロジェクションマッピングのイメージで す。当初は手動で揺らしていましたが、今はイ ンパクトドリルのモーターを使って機械的に動 かすシステムを制作中です」

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積極的に人に問いかけ、経験を自分の身につける力

ゼミでは、諸岡教授からテーマを提示することが多い。「実験ではなく解析を主体とする研究室なので、ある程度プログラムを組んだ状態で学生に渡し、そこから、例えば直交異方性プログラムであれば、スラブのスパンを変えながら、たわみや断面力の最大値を算出したり、計算式の検証をしたりします。卒論は演習に近いものですが、学生にデータを処理してもらうことで、論理的に重要な数値を取り出し分析する情報処理能力が身につきます。ですから、諸岡研究室はコンピュータープログラミングが得意な学生にとって魅力的かもしれません」

最後に諸岡教授に学生へ伝えたいことを聞いた。
「知らないことは聞いたらいい。でも、聞いたことは必ず自分のものにしてほしい。ちゃんとその場で質問して、なんとか理解しようという姿勢が大事です。ピントの外れた問いかけかもしれないけれど、話している方からすると、アプローチのきっかけがつかめるので、一緒に突き詰めていくことができます。そのためには恥ずかしがっちゃダメ。社会人になると難しいですが、学生時代はいくらでも恥をかいていいんです。

その上で、研究室では目の前のちょっと違和感のあることを検証していきたい。これはどうしてこういう式になっているのかわかったら楽しいよね、ということならなんでも研究対象です。プログラミングができるとこの研究室では楽しめると言いましたが、それは学力や能力というより、論理的思考ができるかということです。コンピューターの世界も昔に比べると随分簡単になっています。自分で最初から書き上げるのは無理でも、まずは、誰かが経験した内容で見習える部分を使って、理解してアレンジすればいい。まねることからはじめて、それを自分のものにしていくことをいとわないようなみなさんは、ぜひうちの研究室へきてください」。

インタビュー画像
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研究室メンバーに聞きました

[ 質問項目 ]

研究室メンバーに聞きました
[ 質問項目 ] 
①諸岡研究室を選んだきっかけ
②諸岡先生の魅力
③自身の研究テーマ

  • 尹智浩さん ユン・チホ 学部4年

    尹智浩さん ユン・チホ 学部4年

    ①構造系研究室の中で教え方が上手で、自分に合っていると思った。
    ②やる気のある学生に対し、とても親切に対応してくれる。
    ③平板とボルトからなるシェル

  • 大山昌平さん おおやま・しょうへい 修士2年

    大山昌平さん おおやま・しょうへい 修士2年

    ①真面目な雰囲気が研究していく上で自分に合っていると思った。
    ②些細な質問にも親身に接してくれる。
    ③球形シェル境界部上下面変更による強度低減効果

  • 李純技さん イ・スンギ 学部4年

    李純技さん イ・スンギ 学部4年

    ①留学する前から日本の耐震に興味があった。
    ②面白い人柄。説明がわかりやすい。
    ③什器の転倒条件

  • 近藤彩夏さん こんどう・あやか 学部4年

    近藤彩夏さん こんどう・あやか 学部4年

    ①建築構造に興味があり、より深く研究、解析できる環境だと思った。
    ②わからない点を優しく理解するまで教えてくれる。
    ③フレーム構造教材の開発

  • 下重裕紀さん しもじゅう・ゆうき 学部4年

    下重裕紀さん しもじゅう・ゆうき 学部4年

    ①構造系の研究室に興味があった。
    ②質問に対し親身に一緒に考え適切な助言をしてくれる。
    ③什器の転倒

  • 森山聖也さん もりやま・せいや 学部4年

    森山聖也さん もりやま・せいや 学部4年

    ①目で見てわかる結果を実験できる。
    ②研究内容を考えるときに楽しそうにしている。
    ③フレーム構造教材の開発

  • 劉本源さん リュウ・ホンゲン 学部4年

    劉本源さん リュウ・ホンゲン 学部4年

    ①構造力学に興味があった。
    ②授業・指導に真剣に取り組んでいる。
    ③フレーム構造教材の開発

  • 福田拓未さん ふくだ・たくみ 修士1年

    福田拓未さん ふくだ・たくみ 修士1年

    ①CLTに興味があった。
    ②疑問に理解できるまで教えてくれたり参考文献を紹介してくれたりする。
    ③全周固定直交異方性材料を使ったスラブの設計式の提案

  • 小林琢真さん こばやし・たくま 学部4年

    小林琢真さん こばやし・たくま 学部4年

    ①卒業研究発表を聞き、諸岡研の研究に興味を持った。
    ②親身になって相談に乗ってくれる。質問などへの返答がとてもわかりやすい。
    ③フレーム構造教材の開発

  • 島村涼真さん しまむら・りょうま 学部4年

    島村涼真さん しまむら・りょうま 学部4年

    ①建物の強度がどのように成り立っているのか興味があった。
    ②学生の質問に真摯に向き合ってくれる。
    ③直交異方性単純支持スラブの設計式

  • 濱田栄太さんはまだ・えいた学部4年

    濱田栄太さんはまだ・えいた学部4年

    ①授業がわかりやすく丁寧だった。
    ②学生の考えを評価してくれる。次の目標を明確に示してくれる。
    ③什器の転倒

  • 吉田愛菜さん よしだ・あいな 学部4年

    吉田愛菜さん よしだ・あいな 学部4年

    ①シェル構造に興味を持っていた。
    ②穏やかな人柄。質問に対し親身になってヒントをくれる。
    ③ 平板とボルトからなるシェル

  • 十文字拓海さん じゅうもんじ・たくみ 学部3年

    十文字拓海さん じゅうもんじ・たくみ 学部3年

    ①構造分野の知見・視野を広げたい。
    ②これからたくさん見つけていきたい。

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